バリ島は、「母なる山」と呼ばれるアグン火山による肥沃な土壌と豊富な雨量に恵まれており、ココナッツなどのフルーツの木がそばに生息する水田のふもとでカカオが育ちます。ここのカカオ農園から生まれたのが、産地・農園限定の希少なカカオのみで作られる「キュヴェ・ドュ・スルサー」シリーズの「バリ 68%」(11月発売予定)。このクーベルチュールがはじめて世に出されるまでの3年の歳月がかかりました。ヴァローナの、バリ農園における活動についてご紹介をいたします。
インドネシアは、2013年時点で、カカオの生産量としては世界3位を誇るものの(日本チョコレート・ココア協会 2018)、未熟な農園管理、樹齢の老化、害虫や痩せた土壌が要因となり、カカオの品質や、その生産体制において深刻な問題があり、低品質なカカオ豆が大量に安価で取引をされるか、国内消費をされてしまうのが現状でした。
そこでヴァローナは、2013年にバリ島・ジュンブラナ地方を訪れ、この状況を深刻に捉えていたカカオ農園協同組合「KSS」と出会いました。
「KSS」は、約400もの小規模なカカオ農家からなり、高品質なカカオつくり、そして自分たちの生活の改善について高い意識をもっていました。ヴァローナは、ベネズエラやドミニカ共和国の自社農園を所有するカカオエキスパートとしてのノウハウを生かし、彼らが目指す高品質なカカオ作りへのサポートを約束しました。
まず私たちが最初に取り組んだのがカカオ収穫後の発酵工程。カカオ農家にとって、カカオ豆収穫後の処理工程を行う金銭的余裕やメリットがないことから、カカオの高いアロマを引き出すのに欠かせない処理工程が行われぬまま出荷をされていました。よって、インドネシアのカカオは「バルク・ビーンズ」と呼ばれる低品質カテゴリーに分類されるものがほとんどでした。
従来の方法では、品質面、サステナビリティの面で見直しが必要であると考えたわたしたちは、環境に配慮した栽培方法を取り入れたのです。農薬と化学肥料を使って大規模なカカオ栽培を展開したり、カカオを病害虫から守るのではなく、良質なカカオの苗を、接ぎ木によって増やし、既存のカカオの木から良質なカカオが多く収穫できるようにしました。さらに、農園では、ヤギや牛を飼い糞を肥料にし、カカオポットは牛のえさとして利用することによってオーガニックな製法に取り組んでいます。
また、農園からの収入をカカオに頼るのでなく、シェイドツリーとして一緒に植林しているバナナやココナッツ、グローブ、バニラも販売することによって、収入が安定するように配慮しています。
このようにして、味わい深いチョコレートのもととなる高品質なカカオ育成するだけでなく、生産者も喜ぶ仕組みをつくり、小規模なカカオ農家の一つ一つを丁寧にサポートしているのです。
また、「KSS」の生産者達が自分たちの農園で収穫されたカカオのみで作られた「バリ 68%」を味わうことができる交流の機会を設け、お互いの理解を高め、まさに二人三脚で栽培活動行います。
長年培ってきた、ヴァローナのカカオ栽培に関するノウハウと技術を、現地栽培者、そしてその次世代に伝承し、持続可能なカカオ栽培を行っていくための活動、トレーサビリティ(効率的・生産性の高い流通システム)のサポート、そして、現地生産者たちの生活水準向上のための活動を、私たちは世界の農園で行っていくことを目指しています。